本文へスキップ

灰釉の配合を安定させるまでにかかった時間

著者:松田 沙織 — 工房主宰、
明るくモダンな陶芸スタジオで丁寧に陶器を制作する女性アーティスト。

薪灰の種類と水分量が、焼き上がりの色をどう変えるか

灰釉の色は、窯を開けるまでわかりません。同じ配合で施釉しても、薪の種類が変わったり、焼成中の温度の上がり方が違ったりするだけで、仕上がりの色は大きく変わります。Lineage Coreで現在の青灰色が安定したのは、開窯から五年後の2013年のことでした。

最初の三年間は失敗の連続だった

2008年に開窯した当初、灰釉の配合は陶芸の先輩から教わったレシピをそのまま使っていました。木灰6割・長石3割・珪石1割という基本的な配合です。ところが、焼き上がりは毎回違う色になりました。ある回は黄緑がかった色、次の回は白っぽく飛んでしまう。原因がわからず、配合を少しずつ変えながら記録をつけ始めたのが2009年の秋のことです。

後からわかったことですが、最初の失敗の多くは薪灰の種類の違いによるものでした。薪灰は木の種類によって成分が異なり、針葉樹の灰と広葉樹の灰では溶け方が全く違います。当時は薪の調達先を固定しておらず、ロットごとに木の種類が変わっていたため、配合を変えても結果が安定しなかったのです。

薪灰の調達先を固定したことで見えてきたこと

2011年から、薪灰の調達先を近隣の造園業者一か所に絞りました。主に広葉樹の剪定材を使っているため、灰の成分が比較的安定しています。調達先を固定してから半年ほどで、同じ配合での焼き上がりが格段に揃うようになりました。

それでも水分量の問題は残りました。灰釉は水に溶かして使いますが、施釉時の濃度が厚すぎると焼成中に流れ落ち、薄すぎると色が出ません。2012年の冬に、施釉時の比重を毎回計測するようにしたところ、ようやく色の再現性が上がってきました。

2013年、現在の配合が定まった

2013年の春の焼成で、初めて「これだ」と思える青灰色が出ました。木灰7割・長石2割・珪石1割という配合で、施釉の比重を1.35に固定したときのことです。それ以来、この配合を基本にしています。

ただし、毎回まったく同じ色が出るわけではありません。薪窯の場合は炎の揺らぎや窯の中の位置によって、同じ器でも表情が変わります。それを「失敗」と見るか「景色」と見るかは、作り手の考え方次第です。Lineage Coreでは、その揺らぎを器の個性として受け入れています。

灰釉を使う器を選ぶときのポイント

灰釉の器は、使い込むほどに表面が落ち着いてきます。最初は少しざらつきを感じることがありますが、食器用のサンドペーパー(#400程度)で軽く磨くと滑らかになります。電子レンジは使用可能ですが、急激な温度変化には弱いため、冷蔵庫から出してすぐに電子レンジに入れることは避けてください。

灰釉の配合は今も少しずつ調整を続けています。工房からの読みものでは、制作の過程で気づいたことを不定期に書いていきます。

さらに見る

土と手と、静かな時間のために